2014/11/20

 朝、時間が無かったからタクシーに乗ったんですわ。んで無性にタバコが吸いたくなったんで運転手さんに「すみません。車内って禁煙ですもんね?」と申し訳なさそうな感じで聞いたところ、運転手さん目もくれないで「無論です」と答えたわけです。むろんってお前。武士か。

 やっぱり禁煙だよなーと思いながら溜め息を吐きながら車内を見渡すと、ちゃんと書いてますのね。「禁煙」って。まぁ禁煙って書いてあるのは結構ですよ。だけど気になるのはその下に書いてある文字です。「当タクシーは健康週間に努めます!」って書いてありましたの。
 もう三度見しましたよね。つまりはこのタクシーが健康週間に努めているから客もトゥギャザーしろってことですか。なんで久しぶりにタクシーに乗った僕が、突然タクシー会社が勝手にやってる健康週間に参加しなければいけないの? 普通に普段から吸ってますもんタバコ。健康週間とか参加する気ありませんもん。

 「あー……禁煙………健康週間ですか」

 ボクがそう運転手さんに話を振ると「えぇ、ダメですよ」と謎の念押し。主語も抜いてきやがった。ボクもバツの悪そうな顔で「吸いませんって」と答えたのですが、運転手さんは「いえいえ、いいんですよ」と言葉を返してきやがったのです。
 ……は? どういうこと? 意味がわからんでしょ。ボクが「タバコを吸いません」と言って「いいんですよ」と返すという事は、タバコ吸っていいということのかなと思いまして、恐る恐るタバコの箱を取り出してみたら運転手さんからものすごい剣幕で「だから禁煙ですって!」と言われる始末。なんだこのハゲ。情緒不安定か。

 ……あぁなるほど。ボクの言った「吸いません」が謝罪を意味する言葉の「すいません」だと思ったから、あのハゲは「いいんですよ」って返したということですか。なるほど納得、とボクはタバコの箱をバッグに仕舞い、日本語って難しいなあと考えているとちょうど駅に着いたわけです。

 少し迷惑をかけてしまったなと思い、ボクはタクシーに乗る前に自販機で買っていた缶コーヒーをバッグから取り出して「先ほどはすみません。よければコレどうぞ」とお会計と一緒に渡したら運転手さんは神妙な顔で受け取り、「かたじけないです」。かたじけないってお前。武士か。