2015/01/19

 定期券という魔法のカードを持っている俺は会社と自宅を往復し放題という特権を持って生きているから「いつでも電車に飛び込んで死ねる!」という事を胸に日々を生きているんだけど、改札機がビコーンッてな。今朝、改札通ろうとしたら、ビコーンッてな。通れなかったわ。

 すると駅員が来るのよ。「どうしましたー?」って。それで俺は「通れなくって……」と定期券を手渡すも、なぜか駅員も困った顔を浮かべてるの。どうやら新人だったらしくって、定期券を受け取るやいなや僕と全く同じ行動を取ってビコーンッて。それも3回。それで僕も駅員も困った顔を浮かべて改札前で棒立ちですわ。そこで駅員が申し訳なさそうな顔で、

 「困りましたねぇ……フハハ」

 何言ってんだお前? いやフハハじゃねぇんだよ。お前がどうにも出来ない問題なら先輩とか上司とかに連絡して何とかしてくれや、という事を限りなく優しい口調で言うと、駅員は「そうか!」みたいな顔をして事務室みたいな所に走って行く。俺はもう、ぽつんと改札の横で立ち尽くすしかありませんわ。

 そしてすぐにさっきの新人が駆け寄って来ましたわ。二人も別の駅員を連れて。三人の駅員が僕を囲み、さっきの新人が僕を平手で指し「この人が改札で、あの、定期があったんですけど」と拙い説明を始める。他の駅員二人はイライラし始めて「定期券が通らなかったってことね?」と威圧的な言い方で新人に問うけど、なぜか新人は反射的に「いやっ」と返したまま、言葉に詰まってしまう。「いやっ」じゃねぇだろ。その通りだろ。やめろよ周りがすっげぇ俺のこと見てんじゃねぇかよ。今通りすぎた大学生らしき二人組がこっち見て「痴漢とか?」ってつぶやいてたの聞こえちまったじゃねぇかよ。

 たまらず僕が「いえ定期券が改札に通らなかっただけの話です」と口を挟み、駅員さん二人に定期券を渡すと驚きの一言が。

 「あ、これ期限切れてます。昨日までですよ」

 え? と思わず口にして、定期を受け取り裏返す。本当だ。昨日までになってる。今日19日か。18日だと完全に思い込んでたわ。完全に俺がアホだった。「あちらの窓口で更新できますので、本日更新されますか?」と駅員さん二人が優しく言ってきたため、「お願いします」と深々と頭を下げる俺。そして窓口の近くまで駅員三人と、申し訳無さそうな顔を浮かべた俺が歩いて行く。ハタから見れば完全に痴漢かキセルで捕まった人にしか見えないその状況に、俺は笑うしかなかった。もういっそ捕まえてくれ。社会でやっていける気がしねぇんだ。